歩き方
 私は常歩(なみあし)剣道の動きを創るに際して、「歩き方」を検討しました。歩くという動作は最も日常的な動きです。

 武道の動きと日常的な動作とは全く異なるものだという考えかたがあります。よって、稽古では非日常的な動作を追求するいう考え方です。しかしながら、私は日常的な動作が武道の動きの基礎となると考えました。そこで、剣道の動きと「歩く」という動作の関連を研究しました。このことが、常歩(なみあし)による剣道の出発点です。

 歩くことや走ることを、稽古に取り入れておられる方も多いと思います。私も徹底的な走り込みをした時期もあるのです。しかし、持久力はともかく、「走る」という動作を繰り返しても剣道の合理的な打突動作には転化しないのです。まさしく、剣道の動作は、非日常的な動きだと感じました。

 しかしながら、剣道の動きが非日常的であるのは、現在においてであり、元来そうではなかったのではないか。つまり、私たちの日常的な動きの変化が、剣道の動作を非日常的なものへ追いやったのではないかと考えました。そこで、「歩き方」を研究する必要性を感じたのです。

 現在の私たちの歩き方を検討してみましょう。一般に、私達は右足を出すときに左手を出し、左足を出すときに右手を出します。左右の手足を交互にふります。私達は、この歩きを左右交互型といっています。このときに最も注目すべきなのは、腰(骨盤)の動きなのです。左右の腰の動きは、同側の足の動きとほぼ同じです。右足が前方に振り込まれるときには、右腰が前に動きます。このときに左肩・左手は前方へ動いていますので、極端に言えば体幹を捻って歩いていることになります。

 しかし、常歩(なみあし)では、腰の動きが異なります。右足が前方に振り込まれるときに左腰が出るのです。左足が前に出るときには右腰が出て行きます。つまり、右足が前に出るときには、反対側の左腰と肩が同時に前に出るのです。股関節を十分に使って、体幹を捻らない歩行になります。常歩歩行の要素は他にもあるのですが、常歩剣道に最も必要な要素がこの腰の動きです